空心菜の記事でも書きましたが、ナフサ不足から始まった価格上昇は石油製品以外にも広がり、家計を圧迫し続けています。スーパーに行くたびにため息が出ますね。
特に夏は食卓に新鮮な緑が欲しくなりますが、食べたい野菜を毎回カゴに入れるのは、家計のサイフに大打撃です。食品売り場で安い食材で作れるメニューを考えながらカゴに入れる日々。これからもっと厳しくなるのではないでしょうか。本当に嫌になります。
そんな物価高を生き抜く家庭のキッチンインフラにおいて、手軽な救世主としてよく挙げられるのが「豆苗(トウミョウ)」です。
スーパーでは1パック80円前後で購入でき、さらに「残った根っこを水に浸けておけばもう1回生えてきてお得!」と、ネットの節約術でも大人気です。
確かに、1パック80円は安いですし、2回目の収穫が可能なら値段は実質半分になります。しかし、効率やコストを計算すると、もっと節約できる方法があります。
あなたが市販の豆苗パックを買ってきて上手に再生栽培できるなら、最初から豆苗の種(えんどう豆)を1リットル以上まとめ買いして自宅で自給自足した方が、「もっとお得」になります。また、災害や有事の際など物資の入手が困難になった時も、豆苗が救世主的存在となります。
今回は、そのコスト計算から、栽培で発生するカビという深刻な問題を回避する方法、さらには災害時の最強の備蓄インフラとしての活用法まで、豆苗を種から育てるメリットを解説します。
リアルな収支計算:種1L(1,300円) vs スーパー(80円)
まずは最も重要なコスト計算です。 現在、ネットなどで栽培用の豆苗の種を1リットル(約850g)は、約1,300円で購入可能です。
最も興味があるのは「1パック80円の豆苗を買うのとどっちがお得なの?」と言うことですよね。
市販の豆苗1パックに使われている種は、およそ40g。 つまり、1Lの種があれば、自宅で約21回分の豆苗をゼロから育てることができます。
なお、栽培を行う人は手間よりも節約優先という前提で、生育にかかる労働力はコストに含めないものとします。そして、種から育てるからこそ、節約効果が成立するということもご理解ください。
※会社勤めであれば、1時間の残業で豆苗が20パック買えますからね。
1. 投入コスト(総投資額)
- 種代(21回分): 1,300円
- 液肥代(微粉ハイポネックス等、21回分): 約50円
- トータルコスト:約1,350円
種代1,300円だとスーパーの豆苗は16パックしか買えませんので、この時点で5パックぶんお得です。
2. 得られるリターン(市販品に換算した価値)
カビのリスクを回避するため、「2回収穫して終了」とします。
- 1回目の収穫(自給): 市販の1パック分(80円相当)× 21回 = 1,680円
- 2回目の収穫(再生): 成長の失速を考慮して6割の収穫量(48円相当)× 21回 = 1,008円
- トータルリターン:2,688円相当の豆苗
3. 最終的な損益
「スーパーで80円のパックを買って、自宅で2回収穫すればどうなる?」
1,300円の予算でスーパーのパックを買うと16.25パック分。これを自宅で2回再生させると、得られるトータル価値は約2,080円分です。
つまり、スーパーのパックを再生収穫と比べ、種から育てた方が、「同じ投資額で608円分(スーパーのパック約7.5個分)多く豆苗が手に入る」という結果になります。
手間がかかることと、お店側の利益や流通コストをすっ飛ばして「種」から育てているからこそ、この差額が家計の利得として残るわけですね。
不測の事態で真価を発揮する、最強の「ビタミン製造機」
さらに、この「種からの自給システム」が真価を発揮するのは、現在の国際情勢の緊迫が限界を迎え、物流が完全にストップした時です。
もし大規模な災害や物資不足が起き、スーパーの棚から生鮮食品が消え去って「備蓄している缶詰やパスタ、米だけ」の生活になったとします。炭水化物に偏った食卓が続くと、ビタミンやミネラルが枯渇し、体調管理に深刻な問題が発生します。
そんな時、自宅に豆苗の種(えんどう豆)が1L、2Lと在庫されていれば、それは単なる備蓄ではなく、「豆苗50パック〜100パック分に大化けする生鮮野菜の素」に変貌します。
豆苗栽培は、土も、電気も、肥料すらも不要。最低限の「水」さえあれば、暗闇の中で勝手に細胞分裂を繰り返し、わずか2~3週間で高密度なビタミンB群やβ-カロテンを含んだ「生の緑黄色野菜」に成長してくれます。
これこそが、災害時の健康インフラを支える最強のバックアップとなります。
豆苗の「3度目」はカビが生えやすい?
ネットの節約記事では「3回目、4回目も収穫できる!」と書かれていることがありますが、よっぽど気を使わない限り、3度目は無理です。欲張ってはいけません。
2回目の収穫が終わった時点で、豆の中の貯蔵エネルギーは100%枯渇しています。スカスカになって死んだ豆の組織は、室内の湿気と相まって、高確率でカビ胞子を撒き散らす感染源になります。
豆苗にカビが発生すると、他の水耕栽培システムにまでカビが移り、最悪の場合、室内の野菜生産インフラが全滅する二次災害に繋がります。カビの胞子は人体にも悪影響を及ぼしますし、腐敗臭もします。コバエも寄って来るので良いことは1つもありません。
水の交換さえ注意していればカビを生やさず2回目の収穫は成功します。「2回収穫したらシステムを安全に廃棄する」。これが最も合理的な引き際の美学です。
「カビゼロ」豆苗栽培マニュアル
それでは、具体的な栽培プロセスを解説します。準備するものは、ダイソーのプラスチック容器(豆苗プランターがベスト)だけです。スポンジなどの培地は一切使いません。
1. 種の浸水と毎日の水交換
容器に豆(約40g)を重ならないように平らに敷き詰め、豆がしっかり浸かるまで水を入れます。 豆の殻や割れた豆は取り除いてください。
ここから収穫するまでは、「最低1日1回、必ず容器の水を完全に新しいものに交換する」という処理を徹底します。これを行わないと水が腐り、腐敗の原因になります。
3〜5日で全体に根と芽が出てきます。
1週間経過したあたりでザルの外まで根が伸びます。容器とザルの間にペットボトルのキャップなどを入れて、なるべく豆に水が付かないようにします。(★重要:水を捨てた後、軽量カップで決まった量を入れると良いです)
2. 暗い場所で育てる(軟化栽培)
豆苗は、成長のプロセスにおいて「ずっと暗い場所」で育てます。光に当ててしまうと、茎が伸びる前に葉が硬くなってしまい、食べ心地が悪くなるためです。段ボールを被せるか、シンクの下などの暗所に容器を配置し、ひたすら茎を上に伸ばしていきます。
成長してから光に当てても筋っぽくなりませんが、成長途中で光に当てると筋っぽくなります。
発芽しない豆や、黒ずんでいる豆はカビの発生源となるためピンセットなどで取り除いてください。
種まきから約2週間もすれば、暗闇の中で20cm近くまで一気に伸びて食べ頃を迎えます。収穫の直前の1〜2日だけ窓際などの光に当てて、葉を綺麗な緑色に仕上げれば完成です。
3. 収穫と、2回目の回収
1回目の収穫は、一番下の葉がある部分より上の位置でカットし収穫します。 収穫した容器には、すぐにまた水を張り、少量の液肥(微粉ハイポネックス等)を混ぜておくと、2回目の成長スピードが安定します。もちろん、これ以降も水の腐敗とカビを防ぐため、毎日の水換えは行ってください。
2回目の育成も徒長(ひょろひょろ)させるために暗い所に置きます。
2回目が10cm〜15cmほどに伸びたら、それを収穫してこの株の運用はすべて終了。後は廃棄するだけです。(状態を確認し)1回目の収穫時より根本でカットしても大丈夫です。
未練なく廃棄したらプランターを洗浄しましょう。
4. 育成と収穫のサイクル
豆苗は仕込みから収穫まで3週間程(時期によりそれ以上)です。成長途中で光を当てると筋っぽくなりますが、収穫時期が遅くなっても筋っぽくなります。
わが家では、約1週間ごとにプランター1つを仕込み、新規3つ、再生3つの計6つでローテーションしています。そうすると、3週間目あたりで新規1つ、再生1つのプランターから収穫できます。
新規で収穫した豆苗は再生側に行き、再生側で2回目の収穫を終えたものは、洗浄して新しい豆をセットして新規側で育てます。
もちろん、杓子定規に仕込みと収穫を繰り返すのではなく、成長具合を見ながらの収穫となります。
超長期サバイバルへの発展
また、この種から豆苗を育てるシステムには、状況がさらに悪化して「数ヶ月単位の超長期避難生活」になった場合に生存確率を上げてくれる存在となります。
豆苗は、本来「エンドウ豆」の幼苗です。 そのまま伸ばし続けると、春から夏にかけて白い花を咲かせ、やがて大量の「サヤエンドウ」や「グリーンピース(エンドウ豆)」を実らせます。
つまり、最初はキッチンの暗所で「もやし」のように葉物野菜として消費し、事態が長期化すれば、それを外に出して「主食やタンパク質源となるお豆」として次の世代の食料を収穫します。
カビのリスクを避けるために普段は「2回で捨てる」のが基本ですが、もし自宅の庭やプランター、あるいはベランダの水耕栽培容器に「土や液肥」を投入できる環境が残されているなら、収穫せずにそのまま数株を育て続けてみてください。
普段なら廃棄処分(生ごみ)にするはずの2回目を終えた根株が、サバイバル農地の苗として活躍します。
豆苗を飽きずに食べる方法(普段使いから災害時まで)
自宅で栽培、収穫できた豆苗を、飽きずに消費するために、調理方法もいくつか用意しておきましょう。サラダとして生でも食べられるため、調理が面倒ならドレッシングで食べてしまえばOKです。
育て方のせいだと思いますが、自宅で育てるとスーパーで売っている豆苗より青臭さが出やすくなります。青臭さが苦手な人は、薄味より濃い味付け料理と合わせた方が食べやすいでしょう。
あらゆる汁物への追加具材 味噌汁、中華スープ、鶏がらスープなど、汁物なら何にでも合います。個人的には鶏がらスープで作った卵スープに、3cm程にカットした豆苗を入れて食べるのが好きです。
焼き物、炒め物の具材 チャーハン、パスタ、野菜炒め、何に入れても元の料理を不味くする心配はありません。
生のままサラダのかさ増し 収穫したてのみずみずしい豆苗は、生のままちぎってツナや塩昆布、ごま油と和えるだけで、シャキシャキサラダになります。火を使わないため、災害時のビタミン補給としても優秀です。
結論:短期間で収穫できるバックアップインフラ
種から育てる豆苗は、スーパーから買ってきた豆苗のように、すぐに食べれる訳ではありません。しかし、植物を育てるのが好きな人は「スーパーよりお得」「比較的短期間で収穫可能」という点で損は無いと思います。
普段は「スーパーよりお得な節約ガジェット」として家計を助け、有事の際には「命を繋ぐビタミン・タンパク質の供給源」としても機能します。
水替えするだけで2週間~3週間後に収穫できる豆苗の生育は、物価高の波をスマートに乗りこなすための生活防衛の一つです。金額としては大きくありませんが、自宅の空きスペースに「野菜製造ライン」を立ち上げるのは楽しいですよ。
わが家の豆苗たちは、今日もスープの具材として活躍してくれそうです。


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